出世株候補の同期
仕事の後に同期に誘われて安い居酒屋で終電まで語り合った。
そいつが誘ってくるなんて珍しい事だったからどうしたのかと思ったら…今年いっぱいで会社を辞めようと考えているらしい。
そんな事を考えていたなんて本当に驚いた。
そいつは入社した時から周りの奴とは違って、社会人としてもう出来上がっていたし、すぐに難しい仕事を任される様になった。
同期の中でも一番の出世株候補だった。
どうして辞めようと考えているのかと聞いたら「長い人生だし、もっとやりたい事をやらないと損だ」と考える様になったらしい。
同期のそういう話を聞きながら俺は俺の単純な人生設計を話してみた。
あと3年したら結婚…結婚してから1年後ぐらいに子供を授かって…3年後に家を買う。
ローンを返し終わる年齢を40代後半にしておきたいなぁって…。
そしたらそいつは「その人生設計って今の会社じゃなきゃいけない意味ってないだろ?」って。
言われてみればそうだなぁって思った。
そいつの人生設計にはやりたい仕事のことばかりが組み込まれていた。
今の会社だったら安定した給料をもらえるのに辞めるなんて言い出すのなんて正直バカだなぁって思ってたけど、ちゃんとこれからの人生設計の中にやりたい事があるって羨ましいなぁって思ってしまった。
やっぱりあいつはうちの会社を辞めても出世株なんだろうなぁ
やりたい仕事の事を話す時のそいつの顔がキラキラして見えて、思わず「早めにうちの会社辞めた方がいいよ」って促してしまった。
きっとあいつは大物になる。
俺ももう少し真面目に人生を考えようと思う。
小さな夢
「あなたの夢は何ですか?」と問われて、「私の夢は・・・」とすらすらっと答えを出すことが私にはできない。
10代など若いころならいざしらず、ある程度年を重ねると、夢というものを持つこと自体がなくなってしまう。
けれど、いつまで夢を持てと言われることが多々ある。
何も大それた夢でなくていい。
プロ野球の選手になりたいだとか、歌手になりたいだとか、そういった常人には難しい大きな夢でなくて、身近な小さな夢を持てと言われることがある。
夢見がちでいることではなくて、現実的な目標をもてといったほうが正しいのかもしれない。
確かに、目標をもって生きていくことは日々張り合いが生まれると思う。
仕事においても、ノルマがあって達成することが目標であるとか、新人指導で今度はああしてみようとか、いういわゆる目標。
これらだって言い換えれば夢といなくもないのだろうか。
もちろんそんな現実的な仕事での目標でなく、身近なところではお腹いっぱい美味しいものを食べたいとか、ダイエットをして痩せるのが夢であるとかもあるだろう。
私の小さな夢といえば、年寄りのようなものかもしれないが、平凡に生きていたいと思う。
自分でも言うのも何だがそんなに平坦な人生でもなかったので、静かに平々凡々に日々を過ごしたいと願っている。
ただ、平凡な暮らしとは、つまらなそうと言われそうだし、いうのも簡単だ。
けれど、これほど難しいこともないと思うのだ。
だから、私の夢は平凡な日々を静かに暮らしたいことだ。