食べ物を連想させる石
世の中には奇岩、つまり変わった岩と言うものが沢山ある。
岩にしてみれば実に合理的な化学作用の果てそのような外観を得た訳で、それに後世の人間がこれはあれに似ているなどという肩書きをつけたに過ぎない。
言って見れば、奇岩を奇岩たるべくしているのは、人間が勝手に与えた偶然の附合の結果に過ぎないのだけれども、まあそんなことを言ってもはじまらない。
言ってみたいだけである。
さて、そんな奇岩だが、日常瑣末のものに似ていることが多く、それが人間を喜ばす所以でもあろう。
とくに食べ物に似ているものが多い。
有名どころで言えば、某博物館に展示されていて、時々日本にもやってくる白菜岩だとか(これは白菜にくっついた虫までが彫りだされていて何ともシュール)、豚の三枚肉ブロックに似た岩なんかがある。
この二つに関しては、私も他の観光客のご他聞に漏れず、しっかりと現地の博物館で粛々と拝見してきた。
たしかにそっくりであり、白菜と豚三枚肉というあくまで率直な感想を得た。
その他には、実際には見たことはないが外見は白くて丸いのだけれども、中を割るとまるであんこのような黒い部分が出てくる饅頭石。
これは日本のどこかの奇岩博物館に収蔵されている。
(そう、日本各地にも奇岩博物館と言うのは点在している。)
奇岩でなくとも、五家宝や金太郎飴、ふきを蜜で煮た西洋菓子材料のアンゼリカそっくりのやつだとか、食べ物に似た石は沢山ある。
そういう美味しそうなものをみているだけでも幸せ、という理由でも私は鉱物を非常に好きである。
ただ単に食い意地が極端に張っているだけのことなのではあるが、こんな楽しみも馬鹿にしたものではない。
是非一度、美味しそうという観点からも鉱物を鑑賞していただきたい。